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コラム
令和8年熊本地震の断水支援

2026年7月28日、熊本県で最大震度7を観測する地震(令和8年熊本地震)が発生し、最大で約10万8,000戸が断水しました。被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。株式会社アクアムは8月4日から7日にかけて、断水が続く熊本県八代市と氷川町に入り、学校のプールを水源にしたRO浄水器と、空気から水をつくる空気製水機による給水支援を行いました。この記事では、現地での活動内容と、断水の現場で見えた「災害時に水を確保するためのポイント」を報告します。
令和8年熊本地震で起きた「真夏の断水」
地震が発生したのは7月28日16時27分ごろです。地震の規模はマグニチュード7.1で、宇城市と氷川町で震度7、八代市や熊本市などで震度6強を観測しました。
国土交通省によると、この地震による断水は最大で約10万8,000戸にのぼりました。発生から約3週間がたった8月17日の時点でも、八代市・宇城市・氷川町のあわせて約8,400戸で断水が続き、8月末の解消を目指して復旧作業が進められていました。
断水と聞くと、まず飲み水の不足が思い浮かびます。しかし現場でそれ以上に足りなくなるのが、トイレを流す水、手や体を洗う水、掃除や洗濯に使う水といった「生活用水」です。今回の地震は真夏に起きたため、水の確保は衛生面だけでなく、熱中症の予防という点でも命に関わる問題でした。
アクアムの支援活動の概要
アクアムは地震の発生後すぐに災害支援チームを立ち上げ、一般社団法人災害時緊急支援プラットフォーム(PEAD)の災害支援活動の一環として、現地での給水支援に参加しました。
・8月3日:空気製水機、RO浄水器、貯水タンク(500L×2基、200L×2基)などの機材を現地へ発送
・8月4日〜7日:名古屋と東京からアクアムのメンバー4名と販売代理店のメンバー1名が現地入りし、機材の設置と運用の支援を実施


設置したのは、いずれも断水が続いていた八代市立千丁小学校と、避難所として運営されていた氷川中学校(八代郡氷川町)です。出発前の準備の様子は、8月4日放送のテレビ東京「ワールドビジネスサテライト」でも紹介されました。
千丁小学校:プールの水を生活用水に変える
「電気」と「プールの水」があれば、生活用水ができる
千丁小学校では、学校のプールを水源にしました。プールに水中ポンプを沈めて水をくみ上げ、RO浄水器(逆浸透膜浄水器)で浄化して、貯水タンクにためる仕組みです。RO浄水器は、水の分子は通しても不純物はほとんど通さない膜に圧力をかけて水をろ過する装置です。
設置したRO浄水器は2台。1台あたり約10kgと軽く、持ち運びも容易です。千丁小学校のホームページでは、この支援が「『電気』と『プールの水』があれば、『生活用水』ができる」と紹介されました。


2台で1時間に約100L、1日で約2,500L
RO浄水器は、1台を24時間動かすと約1,250Lの生活用水をつくれます。千丁小学校に設置した2台では、1時間に約100L、24時間で約2,500Lです。これは、500mLのペットボトルに換算すると約5,000本にあたる量です。


学校から地域へ
浄化した水は8月7日から学校で使われはじめ、同じ日の午後からは、被災された地域の方々にも使っていただけるようになりました。水道の復旧を待たずに、学校を拠点として生活用水を届けられたことは、今回の支援の大きな成果でした。
氷川中学校の避難所:空気製水機で飲み水を届ける
避難所となっていた氷川中学校には、空気製水機「AQ-20XR」を設置し、飲料水を提供しました。空気製水機は、空気中の水蒸気を集めて浄化し、飲み水をつくる機械です。


この避難所には簡易シャワーが設けられており、入浴のあとに水分をとりたいという声が多くありました。清潔で冷たい水をその場で飲めることは、避難されている方々に喜んでいただけました。また、シャワーを使ったあとは周囲の湿度が高くなるため、空気製水機にとっては水をつくりやすい環境になるという発見もありました。
空気製水機とRO浄水器を組み合わせる理由
それぞれの得意分野
空気製水機は、電気と空気さえあれば、水源のない場所でも水をつくれます。ただし、AQ-20XRの製水量は気温27℃・湿度60%の環境で1日最大20Lで、少人数の飲み水には十分でも、避難所などの大人数の飲料水や、トイレや手洗いに使う生活用水をまかなうには足りません。
一方のRO浄水器「RO-2500」は、水源は必要ですが、プールや河川などの水を大量に浄化できます。浄水能力は1台で1時間あたり52L、24時間で約1,250Lです。
この2つを組み合わせると、水源がある場所では生活用水を大量に確保しながら、空気製水機で飲み水もつくることができます。
災害支援セットでつくれる水の量
空気製水機「AQ-20XR」とRO浄水器「RO-2500」(プレ浄水器・高圧ポンプ)を組み合わせた災害支援セットで確保できる水の量は、次のとおりです。
・空気からつくる飲料水:1日最大20L(気温27℃・湿度60%の場合)
・外部給水機能:1日最大1,000L(水道水またはRO浄水器で浄化した水を使用)
・水源から浄化する生活用水:1日約1,250L
・トイレ用水:1日約1,250L(RO浄水器でろ過する際に出る排水を利用)
RO浄水器では、ろ過の過程で不純物を含んだ排水が出ます。この排水もトイレを流す水として使うことで、あわせて1日約2,500Lの水を無駄なく活用できます。
いつもの蛇口から出てくる安心感
RO浄水器で浄化した水は、空気製水機の外部給水機能で取り込むこともでき、1日最大1,000Lの飲料水を浄水できます。取り込んだ水は、空気製水機の中でUV殺菌・冷却・ミネラルの添加を行い、いつもと同じ蛇口から出てきます。断水のさなかでも「ふだん使っている機械から出てくる水」を届けられることは、数字には表れない安心につながります。
電源が不安定でも使える仕組み
RO浄水器は、電動と手動の両方に対応しています。電動の場合は家庭用のコンセント(AC100V)から電源をとり、高圧ポンプで浄水器に水を送ります。電源がない場合は、圧力タンクを手動のポンプで加圧して水を送ることができます。

水源として使えるのは、河川、池、井戸、プール、貯水槽、雨水などです。海水は使用できません。
断水の現場でわかった6つのこと
1. 水源には「学校のプール」が適していた
RO浄水器は河川や池の水も浄化できます。しかし災害時の河川は水量が急に変わりやすく、今回は水道の復旧に向けた通水テストの影響とみられる、さび状の浮遊物が大量に流れている様子も確認しました。


その点、学校のプールは水量が安定しており、一般の人が立ち入りにくく、電源も確保しやすい場所にあります。水源としての使いやすさと設置場所の安全性の両面で、プールが最も適しているというのが今回の結論です。
2. 「持ち運べること」が現場で役に立つ
断水エリアは、復旧が進むにつれて少しずつ場所が変わっていきます。今回の給水支援では、被災地からの要望を受けて、水道が復旧した千丁小学校と氷川中学校から、地下水の断水が続いている金剛コミュニティセンターへ、空気製水機とRO浄水器を移設しました。本体が約10kgのRO浄水器は、水が必要な場所の変化に合わせて移設できる点が、現場で高く評価されました。


3. 事前の取り決めが、設置の速さを決める
災害が起きてから設置場所を探し、関係者と調整するのには時間がかかります。自治体とあらかじめ防災協定を結び、どこに置くか、どの水を使うかまで決めておけば、より多くの台数をより早く設置できることがわかりました。
水源になるのは、自治体の施設だけではありません。企業が持つ防火水槽や、民間のスイミングスクール、ホテル、温浴施設のプールや浴槽の水も、RO浄水器で生活用水に変えることができます。民間の施設も含めて協定を結んでおくことが、水源の選択肢を広げます。
4. 平時から置いておくことが、いちばんの備えになる
災害の直後は物流が止まり、支援物資が届くまでに時間がかかります。避難所になる公民館や体育館に、ふだんから空気製水機を置いて使っておけば、災害が起きたその日から飲み水を確保できます。そこへRO浄水器を追加すれば、断水の直後から生活用水とトイレ用水もまかなえます。
今回の地震では被害が熊本県内の一部の地域に集中しましたが、東日本大震災のように広い範囲が同時に被災する災害では、支援が届くまでの時間はさらに長くなると想定されます。平時からの設置と事前の取り決めは、広域災害への備えとしていっそう重要です。
5. 断水の統計に表れにくい水の困りごとがある
熊本県は、井戸水を利用している家庭が多い地域です。断水戸数の統計は水道の復旧状況をもとにしているため、地震で井戸が枯れたり、水が濁って使えなくなったりした世帯は、数字に表れにくいと考えられます。こうした世帯の被害状況は十分に把握されておらず、支援が必要な方を掘り起こしていくことが今後の課題です。
また、介護施設のように、簡単に避難や移動ができない方々が暮らす場所への水の支援も欠かせません。こうした施設とあらかじめ協定を結んでおけば、災害時に優先して支援に向かうことができます。
6. 給水車と補い合える
現地には給水車も数多く派遣されていましたが、行列ができたり、水量が足りなくなったりする場面も見られました。その場で水をつくれる設備があらかじめ置かれていれば、給水車の負担を減らし、互いに補い合うことができると考えています。
今後の取り組み
今回の経験をふまえて、アクアムは次のことに取り組んでいきます。
・すぐに使えるパッケージ化:現地で組み立てや接続をしなくて済むよう、配管などをあらかじめ組んだ状態で保管し、コンセントに挿すだけで浄水を始められる形を検討します
・事前の防災協定:自治体に加えて、企業や介護施設とも協定を結び、設置場所と水源をあらかじめ決めておく体制づくりを進めます
・避難所への事前導入:公民館や体育館などに平時から空気製水機を置き、災害時にRO浄水器を追加する運用を提案していきます
・電源がない場合への備え:2〜3日間の運用ができる蓄電池をオプションとして用意しています
・自治体向けの情報提供:学校のプールを水源として活用する方法について、自治体向けのオンライン勉強会を開いていきます
よくある質問
Q. プールの水は、本当に生活用水として使えるのですか?
A. 使えます。RO浄水器(逆浸透膜浄水器)でろ過することで、手洗いや洗濯、清掃などに使える生活用水になります。千丁小学校では、RO浄水器2台で1時間に約100Lの水をつくりました。
Q. RO浄水器でつくった水は飲めますか?
A. アクアムでは、RO浄水器で浄化した水を、飲料水レベルの水質の「生活用水」として提供しています。飲料水として使うかどうかは、自治体の判断によります。
Q. 停電しているときは使えませんか?
A. RO浄水器は、圧力タンクを手動のポンプで加圧する方法でも使えます。空気製水機は電源が必要ですが、2〜3日間の運用ができる蓄電池をオプションでご用意しています。
Q. どんな水でも浄化できますか?
A. 河川、池、井戸、プール、貯水槽、雨水などを水源として使えます。海水は使用できません。
Q. 自治体や企業が、災害時の水の確保について相談することはできますか?
A. できます。設置場所や水源の検討、防災協定についてのご相談は、お問い合わせフォームからご連絡ください。
まとめ
令和8年熊本地震の断水エリアで、アクアムは学校のプールを水源に、RO浄水器と空気製水機を組み合わせて生活用水と飲み水を届けました。現場でわかったのは、水をつくる機械があるだけでは足りず、「どこに置くか」「どの水を使うか」を災害の前に決めておくことが、水が届くまでの時間を大きく左右するということです。アクアムは「全ての人にきれいな水を」というミッションのもと、今回の経験を、次の災害で一日でも早く水を届けるための備えにつなげていきます。空気から水をつくる仕組みについては、「大気造水とは?」のコラムもあわせてご覧ください。
災害時の水の備え
断水しても、水をつくれる備えを。
AQUAMは、空気から飲み水をつくる空気製水機と、プールや河川の水を生活用水に変えるRO浄水器を組み合わせて、災害時の水の確保を支援しています。自治体・学校・企業・介護施設での事前の設置や、防災協定についてのご相談も承ります。
参考資料
・八代市立千丁小学校「災害支援(生活用水)」(2026年8月7日)
・国土交通省「令和8年熊本地震における上下水道の復旧見込みについて」(2026年8月17日時点)
・ウェザーニュース「令和8年熊本地震 最大震度7」(2026年7月28日)
・一般社団法人災害時緊急支援プラットフォーム(PEAD)
・株式会社アクアム お知らせ「熊本地震の災害支援として、八代市と氷川町に空気製水機とRO浄水器のセットを設置」(2026年8月7日)